組織の歪みを解消し柔軟性を高めるガバナンスミーティングとFUSSYでの事例

ガバナンスミーティングとFUSSYでの事例

こんにちは。FUSSYで主に技術面を担っているわこーです。

最近は Discord の権限管理が Terraform で出来ることがわかり、ガチャガチャといじっています。使っている Provider はこちらです。

https://github.com/Lucky3028/terraform-provider-discord/pull/129によって、DiscordのSDKがdiscordからdiscordgoに変更されたので、これまでサポートされていなかった機能もサポートされるのでしょう。 ちなみにFUSSYの Discord にはこちらから参加いただけます。

概要

FUSSYは組織としてPurposeに向かっていく上で、特に組織体制で発生している歪みを解消する「ガバナンスMTG」という仕組みを導入しています。

弊社はまだまだ成熟しきったプロダクトや組織を持っていません。だからこそ生じている、成長期痛とも言いたい歪みを感じたりしています。

ここ最近のFUSSYがどのような歪みを感じ、解消していったのか、事例を元に紹介していきます。

前提知識

この記事を読んでいただくにあたって必要な、「ホラクラシー」について簡単に説明します。

ホラクラシーとは、組織の中で役職や部署がなく、役割や権限が明確になっている組織形態を指します。弊社は、このホラクラシーに則った組織運営を行っています。このホラクラシーの中では独特な用語がいくつかでてきます。今回この記事で用いている用語をかいつまんで紹介します。

  • Purpose: 組織が達成したい目標や理念。組織の存在意義。

  • Circle: 何らかの目的を持った集団。部署のようなもの。目的、権限、責務を持つ。

  • Role: Circleの中に存在する役割。目的や、部署の中で期待されている行動などが明確に定義されている。

  • ホラクラシー憲法: ホラクラシー組織の運営に関するルールやガイドラインをまとめたもの。

  • 歪み(Tension): 組織内で感じる問題や課題。組織の目的達成を妨げる要因。

上図はRECRUIEサークルの中にあるロール群。

ホラクラシー組織についての詳細は下記の概要記事をご参照ください。

ガバナンスミーティング

ガバナンスミーティングとは、組織内で感じている歪みを解消するための場で、ホラクラシー憲法によって定められたプロセスに基づいて行われるミーティングです。

毎月1回か2回のペースで開催され、組織のメンバーが感じている課題や問題点を共有し、それらを解決するための方法を話し合います。

ガバナンスミーティングのプロセスについては、https://endorphins.tokyo/team/governance-meeting/で詳しく紹介されているため、ここでは省略します。

テンプレート

ガバナンスミーティングでは事前に話し合いたい議題を次のフォーマットに従って準備しています。

テンプレートがあることで、歪みを感じる人の言語化の助けになったり、会議がスムーズに進みという利点があるからです。

## 歪みの内容

ラジオ体操を主導するロールが無い。

* 現在どのような状態か?

ラジオ体操は健康経営のために社員の運動不足解消に貢献することができた。しかし、これは有志でやっていることである。なんとなく、私が実施の責任を負っている形になっている。

* どうあるのが理想か?

参加者やアンケート結果を見ても、意義があることが明確になったので健康経営サークルの中にロールを作り業務として行う。

* 現状を理想に近づけるためにはどうしたらよいか?

 ラジオ体操を主導する「ラジオ体操」ロールを作る。

## ひずみの具体例
他の業務を優先してラジオ体操の開催ができなかったが、ラジオ体操の時間を固定してカレンダーに入れて欲しいという依頼をもらった。

## あなたのどのロールからそれを感じているか?
(わからなかったら、「サークルのコアメンバー」でも可)
健康経営サークルのメンバーとして

## その他(提案の補足など)
このひずみはリモートワークであることに起因しているので、ロールの目的はいったんリモートワーク下に限定します。

このテンプレートを配置しているドキュメントにはおもしろい注意書きがあります。

💡 ただ、提案者自身が歪みを感じていても、どう解決すればいいのか検討がつかない場合もあるかと思います。その時には提案者から話し合いを要請をし、課題解決に必要な情報を他の人に出してもらうことが可能です(提案者の要請がない限りは勝手に話し合いをしてはいけません)

⚠️ なお、他の人へ話し合いの要請ができますので、「歪みは感じたけど解決案が思いつかないから・・・」といった理由で提案をしないことだけは絶対に避けるようにしてください。歪みを感知したのに報告しないことは**会社にとってマイナスにしかなりません。

社内ドキュメントより

DEV Circle を作る

私が入社した2023年1月時点ではプロダクトに輪郭はなく、ただ Purpose が存在しました。

Purpose から具体的な構想が生まれ、Figma になり、日々それらを Rails と Next.js を使って具体化していく必要がありました。それがFUSSYでの最初の仕事です。

ここから先の具体的な話は私の個人ブログに詳しいです。 https://gist.github.com/funwarioisii/a6df95539b833f9521a9b196fb3cb0c6

いくつかのFUSSYの柱ともなる機能をリリースした頃、FUSSYは少しずつホラクラシーの運用が回り始めていました。

それぞれのQuarter(といいつつ1~3ヶ月でタイミングによってバラバラだったりする)で集中して開発したい体験を実現させるための Circle がありました。そして個々の Circle での目標を達成するために開発 Role がありました。その結果、プロダクトがある程度使えるものになりつつあるけど、持続的な開発が困難になりつつありました。

そんな中で発生していた歪みとして、ガバナンスミーティングに提出したのが以下の内容になります。

# ひずみの内容
開発に関するロールが散らばっていて一貫性のあるポリシーを持ちづらい

* 現在どのような状態か?
開発チーム・サークルという概念がなく、以下のポリシー(方針・指針)について
宙ぶらりんなまま会話や業務が進んでいる

- 予算(クレジットカード)
- 採用戦略
- 技術貢献
	- カンファレンス参加・登壇
- 技術選択

* どうあるのが理想か?
エンジニアが短期的ではなく、長期的な観点でFUSSYの事業活動に貢献できる

* 現状を理想に近づけるためにはどうしたらよいか?
1. 開発サークルの設置
2. 各企画には Rep を呼ぶ(というか現状の明確化)

# ひずみの具体例
- web3周り
- 採用が出来ていない


# あなたのどのロールからそれを感じているか?
Qごとに発生しては消えていくロールと自我

# その他(提案の補足など)

ガバナンスミーティングの中では、以下のプロセスを踏んで議題について議論します。厳密なプロセスについてはこちらの記事をご覧ください。

  1. 議題の提出

  2. 議題の共有

  3. 議題に対する明確化の質問

  4. 議題に対するリアクション

  5. 議題に対する修正と明確化

  6. 議題の解決

  7. 議題の解決の確認

これに対する明瞭化の質問としては、

- 一貫性のあるポリシーとは?
- ロールが散らばっている?

という質問がありました。「一貫性のあるポリシー」と、一通り書いてみたもののあまり明瞭な説明を最初にしなかったことがうかがえます。

時間が経ってしまっておりしっかりと覚えていませんが、質問にはなんらかの返答をしました。もとの議題がある程度明瞭化された後、リアクションがはじまります。

提案・質問への回答に対するリアクションは次の通りです。

- エンジニア採用担当みたいな感じでわこーが入るとか
- 技術選択を general の中でロールでもつ
- 予算:ほかサークルにもつける必要がある。
  - 承認者が不明なのを解決すればよい
- 採用戦略:予算と同様
  - サークルないで話してないのが問題
  - 採用戦略?戦術

ガバナンスミーティングでは、議題の提案者が提案した内容に対して、提案者は自分にとって不利な意見にも耳を傾ける必要がありません。

なぜなら、それらの個別最適化の上で、全体最適化ができるというのがホラクラシーでの考え方になっているからです。これに対して私が行った修正と明確化は次の通りです。

- 話せていなかったのが、未知の技術調査・選択をする時間が事業サークルの中では取れないということ
- 思いつくたびに、各サークルで管理するよりエンジニアサークルで管理するほうが管理がラク
- 予算:長期的にはそうだが、AWS利用料金などは大きなサークル単位で管理した方が良いと思っている
  - わざわざやらなくても良い
  - Repとかでつなぐのが良いか?
  - ベストな答えはまだない

これらの議論を通じて、FUSSYでは「技術で長期的に事業に貢献する」というPurposeを持ったDEV Circleを設置し、技術選択からエンジニアの採用戦略などを一元管理することになりました。

ガバナンスミーティングを通じて

課題と解決がセットである必要がない

「課題と解決がセットである必要がない」という考えがルールとして明文化されていることには驚きました。

個人単位でこの話をする人は多いと思うのですが、会社組織を円滑にという観点で黙殺されがちな主張です。

FUSSYでは「チーム・組織としてはいまは答えが出せないが、これでいく」というスタンスも含めて運用しており、なんらかの答えをチームで出せているところから、歪みを明らかにするハードルを大きく下げています。

不利な意見に耳を傾けない

「不利な意見に耳を傾けない」これも驚いたルールです。ガバナンスミーティングでは、提案者の歪みの解消を第一に考えるため、提案者が不利な意見に耳を傾ける必要がないとされています。

これは個人レベルで運用すると失敗しそうですが、Purpose に向かう Circle という単位で考えたとき、この方法はスケールしそうです。

補足の説明になりますが、全てを完全に無視できるわけではありません。

無視できないケースとしては、他の Circle の Purpose の達成を妨げるような提案があった場合です。

たがを外す

組織は個人によって成り立っています。 特に現状3人の組織だと、個人の貢献が大きく影響します。

歪みを感じているのは組織の Purpose に向かうエネルギーがあるからで、ミーティングを通じて得られる変化は、個人がよりパワーを解放するのに役立っていると感じています。

まとめ

この記事ではFUSSYで行っているガバナンスMTGと、実際に解決された歪み、ガバナンスミーティングを通じて持った感想を紹介しました。

ガバナンスMTGは歪みが持ち込まれているという性質上、必ずしもスムーズに進むわけではありません。

しかし、解決せずに放置してしまうよりも、歪みを解消することで組織全体がよりPurposeに向かっていけるようになります。

この記事が組織構成を組んでみたもののうまく機能していないと感じる方にとって、一つの参考になれば幸いです。

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FUSSYではホラクラシーわからないな〜と感じる人が相談できるチャンネルがあるDiscordを運用しています。

興味がある方は、ぜひDiscordに参加してみてください。